「良いアイアン、ありますか?」 本当に良く聞かれます。
良いアイアンを定義付けるのは難しいものでして・・
顔が良い、打感が良い、バックフェイスが格好いい、など様々な要素があって且つその感じ方も人それぞれです。
易しい、と言うキャッチコピーも使う方によっては易しくも難しくもなりますし(後日の御題とさせてください)、目指す所によってもその選択は変わって来ると思います。
「いやいや、そうじゃなくてロフト・ライ角や重量誤差の少ないような・・」
こちらも本当によく聞かれます。
メーカーによってはこの誤差に開きがあるのは事実なのですが、ロフト・ライ角は曲げれば揃いますし、重量は重い軽いはさて置き、削れば揃いますのでアイアンに関して当方はあまり気にしていません。
ですが、重量についてはそれによって制約が付いてきますから、ネック内での調整を行わない事を前提に調整代を確保出来得ると言う意味で重いに越したことはありません。
理想的には重量を指定してベタから削れるのであればそれがベストです。
ロフト・ライ角についてはシャフトを真っ直ぐ装着すれば狙った角度にほらピッタリ!と行けば楽なのですが、そこは工業製品ですから滅多にお目に掛かれるものではありません。
それでも稀にこういったケースに遭遇します。
接着、フェルール研磨後のアングル調整の為にまずは現状の各所アングルを測るのですが、#5~9番まで見事にロフト・ライ角が揃っています。
中々お目に掛かれませんが、PWまで揃っていようもんならこれはもう野球で例えるなら「ノーノー」くらいの偉業だと思うのです。
ドキドキしながら最後のPWの測定を行いましたが残念ながら・・・
いつもこのような結果にはなりません。
??と言った結果になることもあります。
それでも真っ直ぐにシャフトを挿入すればある程度の精度が保たれているのは素晴らしいことで、企業努力の賜物でしょう。
しかしながら真っ直ぐに入れて、挿入後に正確に測る事ができなければそもそもそのヘッドの精度が良いも悪いも無い訳です。
~のメーカーは精度が良いので調整しなくても大丈夫!とは良く聞く話ですが、程度の差こそあれ在り得ない話です。
話がそれましたが良いアイアンのお題に戻ります。
前述の理由から中々難しいお話なのですが、作業をする側の立場から、というよりは当店店主がどうしても一番気になるのはFP値(フェイスプログレッション)でしょうか・・
アイアンはウッドやパターと違い、数本のセットで使用されます。
つまりどの番手を構えてもそこに違和感があると非常に使い辛い訳です。
形状やシャフトの挿入方向が揃っていない等はお話になりませんが、皆さんが出っ歯だグースだ、刃が下がっている出ているなど色々な表現をされますがこのFP値が綺麗に流れていないとどうにも統一感のないアイアンセットになってしまいます。
あまり気にならない方もおられるようですが、店主はどうしてもそこに目が行ってしまいます。
日米欧で主にスタンスとボールポジションに依りここの考え方は変わって来ますが、それでも凸凹しているようでは目も当てられません。
当店にも試打クラブが沢山ありますが、恥ずかしながら資金力とスペースの問題でアイアンに関しては殆どが7番の単品です。
単品での試打で好結果を得たもののいざセットで組み上げるとこのFP値が綺麗に流れていないことがあります。
得てしてこのようなヘッドは重量管理も疎かな傾向にあると感じます。
この数値はロフト変化と密接な関係にあり、ロフトが動くとこちらも動きます。
変化量は1度で0.5mmにも満たないのですが、0.5度のロフト変化ではピンと来られない方でも1度ロフトを動かすと殆どの方の視覚に訴えてくるレベルで刃の出方が変わります。
調整前にバラバラでもロフトを整えればそれなりにFP値もある程度は整うこともあるのですが、全てがそう上手くいかないのが現状です。
結局は製造時の過程と言いますか工程の順番の影響が大きいのでしょうか。
そもそもロフト管理を甘く見ているのでしょうか。
先日、48度~2度刻みで展開しているメーカーのウェッジを拝見しましたが、各ロフトでFP値がバラバラ、視覚的にもグースあり出っ歯ありとバリエーションに富んでいます。
規則性のあるバラツキですので恐らくは50度と56度の2種類の金型をベースにただロフトを曲げただけでFP/バウンスの調整を行うことなく製品化しているのでしょう。
ある店にその58度の試打ヘッドが準備されていたとします。
試打の結果、気に入られて普段使っている56度をオーダーしようものなら予想だにしない刃の下がったウェッジが納品されることになります。
そしてロフトの変化はバウンス角とも密接ですので、グースネックのローバウンスウェッジの出来上がりです。
ただし、これらを逆手にとっての調整は有意義であることを加えさせていただきます。
ロフトを整えた結果FP値が上手く流れない場合の対処法はあります。
ある意味、スクラップ&ビルドのような作業になりますから当然ながら素材や製法(構造)を選びますので、出来ない物は出来ません。
こちらも次回以降のお題とさせていただきます。
お題ばかりが増えて溜まって困ったもんです。
家族とのレジャー案を次々と提起するのですが、殆どが行けずじまいで愛想を尽かされたお父さんのような気分です。
視覚に訴えてくる見栄え、使い勝手、打感など様々な要因がプレイヤーの購買意欲を掻き立てます。
あまりにも酷いものは論外ですが、使いたい!と思っていただいた商材を精一杯整えて御提供するのが我々の仕事ですので何なりとご相談下されば幸いです。
最後に、FP値について色々と述べてきましたが最優先されるべきはロフトです。
クラブ本来の用途を満たす上での影響を考えた場合、やはりロフトが整っている事の方が重要ですので誤解なさらぬようお願い申し上げます。
そう言えばもう一点、同じくらい気になる箇所がありました。
ネックの長さです。
こちらも性能面での影響が非常に大きいと考えますので、ついつい気にしてしまいます。
そもそも凸凹では美しくありません。
メーカーによってはショートアイアンのネックを敢えて長く設定しているところもありますが、主に重量調整による不揃いが殆どです。
面白い物で、不揃いが顕著なヘッドほど何故か重量差に均一感が無いと言う摩訶不思議な現象も見受けられます。
この程度で揃っていれば作業側のテンションも非常に上がりますね。
ゴルフシーズン突入です。
各所で大きな競技も始まっており、ご来場される方々の目つきも少し厳しくなってきたかと感じています。
今シーズンも残りわずか、精一杯楽しんでいただき、その後来シーズンに向けてのアイアンを検討されておられる方への参考になれば幸いです。
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