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speakeasy!

第二十八夜 He is very curious

開店当初からのお客様。 先日、オーダークラブの受け取りにご来場いただいた際の出来ごとです。

「有り難うございました!」 「こちらこそお待たせしてしまい申し訳ございません、有り難うございました」 「ところで、ひとつ作って戴きたいクラブがあるのですが・・」 「はい」 「練習用に物凄く長いアイアンが欲しいのですが、どう思われますか?」 「物凄く長いアイアン・・」 「はい、動画であるプロの練習風景を見たのですが、物凄く長いアイアンを使っていたもので」 「具体的にどれぐらいの長さですか?」 「恐らく、ウッド並みの長さだと思います」 「40インチほどですか?」 「いえ、ドライバーくらいだと思います」 「・・・」 「素振り用ですね?」 「いえ、打ってました (笑)」 「打つのですか!?」 「はい、できれば」 「むずかしいでしょうか・・(作製が)」 「・・少し考えてみます」 「どう思いますか?(練習効果はあると思いますか?」」 「全くわかりませんが、面白そうだし、こういうのは嫌いではないのでやりますか!」

と、好奇心旺盛な若者とこれまた好奇心旺盛なおっさんが意気投合してしまいました。

「ヘッドはどうされますか? なるべく軽い物が望ましいのですが」 「使っていない3Iのヘッドがありますから、それで大丈夫ですか?」 「どこのメーカーですか?」 「T社です」 「ああ、随分軽いので打って付けですね、それでも重いでしょうが」 「では、それで!」 「問題はシャフトですね・・」 「やはりカーボンですか?」 「でも練習用でしかもお試し的なクラブですから、出来れば安価なスティールでいきたいですね」 「しかも、素振り用ならまだしも実際に打撃をするわけですから、折れ・抜けがあってはいけません」 「チップ径はできれば9mm以上で9.4mmがあればよし、長さも充分取れて軽くてスティールか・・・・・あっ!!」

という訳でシャフトはこちらに。

シャフト

KBS TOUR HYBRID X (43inch 110g  Tip 9.4mm)

お使いのアイアンにはMODUS SYSTEM3 S-Flex を使用中です。 もう少し軽いシャフトがあれば良かったのですが、店主の考える条件をクリア出来たのはこのシャフトでした。


ヘッドはこちら。

ヘッド

TITLEIST 710 CB #3

ヘッド重量はこのままでは使えないので(出来るだけ長くとのご要望)、軽量化を施しました。 内から外から、とにかくどんどん落としていきます。 結果、約10gほど軽量化に至りました。 もう少し軽くしたかったのでネックをカットしようかとも考えましたが、相当に負荷が掛かることが予想されますので接着寸による強度不足も怖いので断念した次第です。 様子を見ながらの切削でしたので、少し不格好になりましたが軽く流していただければと思います。(申し訳御座いませんでした)

さて、具材も揃いましたので組み付けに掛かりますが、ここはやはり拘って実際に地面から打てるクラブに仕上げないといけません。

長さは43インチに決め打ちします。 極端に長くなったことで圧倒的な振り重さと言いましょうか、振りずらさが発生しますのでシャフト重量と長さから鑑みるとB~Cバランス程度で充分なのですが、今回は限定的な具材と出来るだけ長くがテーマですから、頑張ってEバランスで振っていただきましょう。 そのそも早く振る為の練習器具ではないので、ここは譲歩しても良い部分だと考えます。 そしてきっちりとヒット出来た際のご褒美、ヘッドの美味しい部分に当たる、真っ直ぐ飛ぶ、と言った見返りを得るための大きな障害はライ角の問題です。

710 CBのカタログ値でのライ角は60度ですが、接着後のライ角は約61度でした。 43インチで組む場合、理論値で56度程度に持っていきたいところですが・・・ この手のヘッドの場合、通常の持込み作業に於いて破損は免責でお願いしています。 滅多にないのですが、クラックや割れは1度以下の調整でも発生してしまうこともありますし、5度程度曲げても大丈夫な場合もあります。(ネックの製法・穴の偏芯などによる) 外観的なところでは1度以上でメッキに皺が出てきますが(メッキ硬度、仕上げ方法による)、今回はイレギュラーな作業ですから破損のみを避けての作業になります。

様子を見ながらこちらも思い切りよく曲げて行きます。 感覚的な部分で説明し辛いのですが、「そろそろ来るかな・・」といった一歩手前までで作業を終える勇気も必要な気がします。

そして全ての作業を終えて完成したクラブがこちら。

※グリップはパーフェクトプロ Xラインラバー M60X 下巻き2

左が通常の3番アイアンです


ライ角はもう少し、といったところですがこの長さと結構柔らかいシャフトですから、たっぷりと<垂れる>のでこれで良しとしましょう。 それにしても、こうやって数値を見ただけでも振りにくいのが分かるレベルです。

このクラブが果たしてどのような効果があって、実際に恩恵をもたらすのかは分かりませんが“やってみる”好奇心は何事に於いても大事なのだと思います。 仮に結果が出なくても、それはそれで大事な事を教えてくれるはずです。

楽しい作業でしたね。 このような機会を多々与えていただける当店のお客様にはいつも感謝の気持ちで一杯です。 勉強にもなりますし・・ しかしながら、このような練習器具をお勧めしている訳ではないので誤解なきよう。 早く振ろうとすれば怪我の恐れもあります。 でも、効果絶大ならお勧めするかも知れません、多分。

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